愛され秘書の結婚事情
「じゃあ、酒豪の女もお嫌いなんじゃ……」
また泣きそうな顔をした七緒を見て、悠臣は笑いながら「いや」と言った。
「お酒に強いことは悪いことじゃないでしょう。それに君のあれは正義に則った行為だし。むしろ僕はその話を聞いて、君に特別ボーナスを支給してあげたいと思ったくらいだよ」
その返事を聞いて、七緒はホッとしたように表情を緩めた。
「良かった。無駄にお酒に強いせいで、桐矢さんに嫌われたらどうしようかと思った……」
「嫌わないよ。僕が君を嫌うなんて、そんなこと起こるはずがない」
そこで桐矢は「そうだ、忘れていた」と立ち上がり、七緒が部屋の端に置いていた紙袋をテーブルまで持って来た。
「これ、台湾出張のお土産」
「え?」
ケーキ皿を脇にやり、悠臣は袋の中身を次々と長テーブルの上に置いていった。
短辺が九〇センチ、長辺が二四〇センチもある大型のダイニングテーブルが、たちまち土産物の山で埋まる。