愛され秘書の結婚事情
「まさかこれ全部、私一人へのお土産ですか……?」
「うん。だって誕生日だし」
「ですが誕生日のプレゼントはもう、先週頂いたはずですが……」
「そうだね。だからこれは追加のプレゼント」
「つ……」
一瞬呆然とした七緒は、けれど次の瞬間、「信じられない……」と声に出し、笑った。
けれど笑いながら彼女は、ポロポロと涙を零した。
突然泣き出した彼女を見て、悠臣は仰天した。
「どうしたの。このプレゼントは気に入らなかった?」
「違います……」
七緒は大きく首を振って、懸命に涙を止める努力をした。
そしてどうにかそれに成功し、彼女は赤い目のまま彼に笑みを向けた。
「言ったでしょう。私ずっと、夢を見ている気分なんです。桐矢さんにプロポーズされてからずっと、覚めない夢を見ているようで……」
「七緒……」
思わず彼女を呼び捨てた悠臣を、七緒は切なげな表情で見つめた。
「正直、すごく怖いです。もう私、昔の自分に戻れない。もしこの先、あなたの愛情を失うことがあったら、私、自分がどうなってしまうか、わからない……」