愛され秘書の結婚事情

 信じられない告白を聞いて、悠臣はショックに言葉を失った。

 そんな彼に、七緒は静かに立ち上がり、自ら近付いた。

「まだ、さっきのお返事を聞いていません。私のこの姿は、お気に召しませんか」

 驚きに目を見開く悠臣に、七緒は女の顔で訴えた。

「サロンでパーマを当てている時。メイクを習っている時。新しい服を選んでいる時。今日、あなたを迎えるため料理をしていた時も。私はずっと、桐矢さんのことだけを考えていました。少しでも綺麗だと思ってくれるかと、可愛くなったと思ってくれるかと、そんな期待ばかり膨らませていました」

「七緒……」

 さっきと違う種類の涙を浮かべ、七緒は言った。

「仰って下さい。今の私はお嫌いですか。この格好はお気に召しませんか。私……」

 けれど彼は、もう彼女に最後まで言わせなかった。

 無言で立ち上がった悠臣は、目の前のいたいけな心を体ごと抱き寄せ、両腕できつく抱き締めた。
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