愛され秘書の結婚事情
綺麗な涙を見せながら、七緒は言った。
「私も同じです。不安だから、ちゃんと言って欲しい。今もまだ、私にプロポーズしたことを後悔してはいませんか。私はあなたの隣にいてもいいですか。教えて下さい。言葉と態度で、示して下さい……」
「綺麗だよ」
悠臣も彼女を真っ直ぐに見つめ返し、そして正直な思いを口にした。
「さっきはすまなかった。君があまりに美しくなったから、ショックを受けたんだ」
「え……」
驚く七緒を笑顔で見つめ、悠臣は言った。
「前から君が綺麗なことは知っていた。でもそれは、僕一人が知る特別な秘密のはずだった。けれどもう、それは隠しきれないものになってしまった。だから、ショックを受けて、動揺したんだ。自分だけの花園を誰かが荒らしに来るんじゃないか。誰かに奪われてしまうんじゃないか。それを恐れて、君にちゃんと綺麗だと言ってあげられなかった」
「その秘密の花園とは、私のことですか」
「そう。この上なく美しくて清涼で、静謐な光に満ちた、僕の聖域だ」
悠臣の言葉に、七緒はまたじわりと涙を滲ませた。
「……桐矢さんは、私を買い被りすぎです。私はただの平凡な女です。平凡な田舎娘が、優れた容姿と立場と財力と、全てを持ち合わせた男性に思いがけず愛されて、ただ戸惑って、そして少しでも彼に近付きたくて、懸命に背伸びしているだけなんです……」