愛され秘書の結婚事情

 今朝、悠臣は、「伯父も基本、母と同じスタンスだから。君がうちに残りたいと希望すれば、このまま秘書を続けられるはずだよ」と楽観的な観測を話していた。

 だが七緒自身、そうあればいいと願っていた。

 秘書室を出て悠臣の常務室へ行った七緒は、そこでデスク周りの整理をしながら、スマホの画面をチラチラ気にして見た。

 伯父との面談が済めば、すぐに悠臣から連絡が入るはずだが、その電話はまだ掛かって来ない。

(話が長引いているのかな……)

 不吉な予感に囚われて、七緒は痛む胸をぎゅっと押さえた。

 すると驚いたことに、先に一階の受付から内線があった。

「桐矢常務が出社されました」

「え!」

 受付からの連絡を受け、七緒は仰天した。

(悠臣さん、電話をくれるって言ったのに……!)

 約束を守らない男に腹を立てながら、七緒は急いでエレベーター前に向かった。

 彼女が到着したと同時に、悠臣を乗せた箱も到着し、扉が開いた。

 エレベーターには、悠臣一人だけがいた。

 しかしその顔色を見た途端、七緒は絶望的な気持ちになった。
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