愛され秘書の結婚事情
そのまま自分をエスコートして店を出ようとする悠臣に、七緒は「あの、こちらのお会計は……」と小声で訊ねた。
「ああ。もう済ませてあるよ」
「えっ……」
「言ったでしょう。今日は僕の奢りだって。そのドレス一式は、僕からの誕生日プレゼントです」
「え、でもあのこれ、常務にプレゼントしていただくには、あまりに高級なお品ですけど……」
「そう? 僕としては充分に予算内だけど」
「そ、そうですか……」
それ以上反論も出来ず、七緒はまた目を伏せた。
そんな彼女の顎に、悠臣は軽く指先をかけて上向かせた。
「じょっ、常務?」
至近距離で見つめ合い、悠臣は自分より濃く黒い、良く磨かれた宝石のような瞳を見つめた。
七緒もまた、悠臣の色素の薄い、赤茶色の瞳を見上げた。