愛され秘書の結婚事情

「そういう彼女だから、会長も結婚を賛成して下さったんでしょう。それより桐矢常務」

「なんですか」

「どうしてあなたは、わざわざ医務室に来て愚痴っているんです」

「だって、ここで僕達のことを知っているのは、十倉先生だけですから」

 悠臣は当然、という顔で答えた。

「おまけに医学者だし。悩みを打ち明けるにはうってつけの人物でしょう」

「……私はただの看護師です。カウンセリングの講義は受けましたけどね」

 そこで乙江は、見た目よりはるかに子供っぽい会社幹部を見た。

「まあでも、あなたが思い違いをなさっていることはわかります」

「え?」

「彼女はそんな、クールなタイプには見えませんでしたよ」

 乙江は鍵を手に立ち上がり、笑顔で言った。
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