愛され秘書の結婚事情
「せっかく綺麗な格好をしているんだ。もっと堂々として。下ばかり見ずに、前を向いて」
「申し訳ありません……」
顎を持ち上げられたまま、七緒は逃げ出したい気分で答えた。
「でもあの、こういう格好は慣れなくて……。どうにも気恥ずかしくて……」
「それなら僕を見ていればいい」
「え……」
「他人の視線なんて気にせず、今日は僕に集中して。いつもそうしてくれているでしょう?」
そこで悠臣はニッコリ笑った。
それは彼が良く七緒に見せる、上司としての余裕に満ちた笑みだった。
その笑顔を見て、七緒はようやく気持ちを落ち着かせた。
何よりこれから、彼女は上司に重要な告白をしなければならない。高級ドレスと高級フレンチに浮ついている場合ではないのだ。