愛され秘書の結婚事情
ゴールデンウィークまであと一週間という、四月二十日、木曜日。
台湾での出張を成功させた悠臣の許に、今度はあちらの企業から視察団が会いに来た。
彼らは、サブマリン傘下の様々なジャンルの店を見学したいと言い、当然のように悠臣がそのホスト役を任じられた。
海外の大口取引相手ということで、随行するのも小森室長以下ベテラン社員となり、木、金の視察団との接待に、七緒は本社で留守番となった。
悠臣は土曜日も台湾からの客と会食の予定で、常務室でデータ整理をしていた七緒は、「はぁ……」と憂鬱な溜め息を零した。
悠臣は昨晩も視察団に付き合ってクラブに行き、帰宅は深夜となった。
おそらく今日も帰りは遅くなるだろう。
自分一人でルームサービスを頼むのも気が引けて、七緒の昨日の夕食は、冷蔵庫の残り物で作ったチャーハンだった。
(今日はどうしようかな……)
悠臣の部屋に越して来てから、ほぼ夕食を自炊することがなくなったせいで、冷蔵庫には朝食の材料しか入っていない。
(簡単に、市販のソースでパスタにしようかな……)