愛され秘書の結婚事情
七緒はすぐにその内線に出た。
彼女は央基の名を聞くと、「え!」と驚きの声を上げ、「すぐに行きます!」と答え電話を切った。
ほどなくして、焦った顔の七緒が一階に現れた。
彼女は受付前に立つ央基の顔を見て、「嘘っ!」と短く叫んだ。
「なんでここにいるのっ!」
だが驚いたのは央基も同様だった。
彼は現れた七緒を見て、目を丸くし軽く仰け反った。
「お前……七緒、か?」
よく知っているはずの女が、記憶と全く異なる姿で現れたのだから、彼が驚くのも当然だった。
「なにバカなことを言ってるの」
幼馴染の困惑した視線を、七緒はきつい口調で跳ね返した。
「ていうか、なんで央基がここにいるのっ」
「え。いや……お前に会いに来たんだけど……」
当初の勢いを失くし、央基はしどろもどろに答えた。あまりに七緒が別人になっていたために、まともに彼女の顔を見ることが出来ない。