愛され秘書の結婚事情

 幼馴染の背中を見送って、七緒が「ハァ」と息をついたのも束の間。

「佐々田さんっ!」

 二人を遠巻きに見ていた女子社員が駆け寄って来て、七緒はいきなり四人の同僚に囲まれた。

「ちょっと、今のイケメン誰!?」

「芸能人みたいにカッコ良かったね! もしかして彼氏!?」

 七緒は曖昧な顔で、「いえ、ただの知り合いです」と素っ気なく答えた。

「知り合いにしてはすごく親しげじゃなかった?」

「いえ、本当に。ただの知り合いです」

 七緒はいつもの秘書の顔になり、「仕事が残っていますので、失礼します」と、さっさと自分の持ち場に戻った。
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