愛され秘書の結婚事情

「……仰る通りです」

 いつもの秘書の顔を取り戻し、七緒は真っ直ぐに悠臣を見返した。

「申し訳ございません。慣れない状況に取り乱してしまいました」

「いやいいよ。そもそも君に、慣れない格好をさせたのは僕だしね」

 悠臣もそこで表情を緩めた。

「だけど僕としては、毎日でもそういう格好をした君を見ていたいな」

「えっ……」

「もちろん、いつものビシッと隙がない格好の佐々田さんも、それはそれで魅力的だけどね」

 悠臣はそこで、綺麗なウィンクをして見せた。

 七緒は軽く呆れ、「おたわむれはお止し下さい」と厳しい声を出した。

 叱られながらも悠臣は、「うん。ようやくいつもの君になったね」と言って笑った。
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