愛され秘書の結婚事情

「お前、信じられないことを言うヤツだな……」

「なにが」

「……もういいよ」

「もういいってなにが」

「うるせーよ。それより、お前が婚約したって本当かよ」

「あ、お母さんに聞いたの?」

「小母さんじゃなくて小父さんに聞いたんだよ」

「お父さんが? なんでお父さんとそんな話になったの?」

「……お前、まさかなにも聞いてないのか」

「なにが?」

 運ばれてきたカフェオレを一口飲んで、七緒はのんびりした口調で訊ねた。

「お前、先月の十七日で三十になっただろ」

「うん」

「三十になっても独身のままだったら、松江に帰る約束を小父さんとしてただろ」

「うん」

「戻ったら、見合い結婚する約束もしてただろ」

「……うん」

 だんだんと話の流れが読めてきて、七緒は神妙な顔つきになった。
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