愛され秘書の結婚事情
「ねえ、場所変えよう」
「なに?」
「ここだとちょっと、人目があって話しづらくて……」
「……ふーん。じゃあお前の家に行くか?」
「ダメ」
即答で断られ、央基はまたチッと舌打ちした。
「じゃあどこならいいんだよ。今日俺が泊まるホテルか?」
「……確かにそこなら落ち着いて話せるだろうけど、そこもダメ」
そう言って七緒は、左手薬指のリングを見つめた。
その視線を追った央基は、キラキラと眩く輝くダイヤに目を細め、ぐっと奥歯を噛み締めた。
「……別に俺は、ここで話を続けて構わないぞ」
「私が構うの」
「じゃあお前が移動先を決めろ。それが筋だろ」
「……じゃあカラオケボックス」
「うるさくて汚いから嫌だ」
「……レストランの個室」
「金曜の夜に空いてんのか」
「それは店に聞いてみないと……。ここからタクシーで行ける距離の個室があるレストラン、沢山知ってるから。今から電話で聞いてみる」
「……好きにしろ」