愛され秘書の結婚事情
4.
一流レストランの料理は、七緒の期待以上の味だった。
前菜の一皿目から彼女は、目にも楽しい盛り付けに小さな歓声を上げ、その複雑で洗練された味に舌鼓を打った。
「……佐々田さんは、島根県の出身だったね」
「はい。島根県の松江市です」
「宍道湖で有名だよね。出雲大社があるのは出雲市だっけ」
「そうです。自然ばかりの田舎ですが、良い所ですよ」
故郷の景色を思い出し、七緒は一瞬だけ遠い目をした。
すでに前菜は済み、二人の前には魚料理の皿が置かれていた。
専用のナイフとフォークを使い、七緒は身の柔らかな鰆のポワレを一口食べた。
とたんに口元を緩め、七緒は心底美味しそうな笑顔を見せた。