愛され秘書の結婚事情

「え……?」

 ポカンとする悠臣を見て、彼女たちはまた好き勝手に口を開いた。

「もしかして桐矢常務も、佐々田さんの彼氏の顔は知らないんですか?」

「でも佐々田さんが婚約したことはご存知ですよね? 直属の上司なんですから」

「あのティファニーの婚約指輪、凄いですよね! あんな指輪を贈るくらいだから、佐々田さんの彼氏はお金持ちに違いないって、もっぱらの噂だったんですけど」

「実物見て納得です! すっごいイケメンの上に、着ているスーツがチェスター・バリーですよ! 嵌めてた時計はパテック・フィリップだったし!」

 やたら高級ブランドに詳しい一人が叫び、相方が「あんた、メチャクチャ観察してるわね……」と呆れ顔で言った。

「弟がメンズファッション誌の編集者なのよ」

 話を時折脱線させて、しかし二人は最終的に同じ結論に達した。

「でも佐々田さんが綺麗になった理由が、これでわかりました」

「うんうん。社内でも凄く話題になったけど、あの彼氏なら納得だよね。あんなイケメン彼氏が出来たら、そりゃ綺麗になるよね」

「なんか凄く仲よさげで、お似合いだったよね」

「ねぇ~」
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