愛され秘書の結婚事情
常務室に戻らず、そのままタクシーで帰宅した悠臣は、無人の室内を見て呆然とその場に座り込んだ。
頭の中が真っ白になって、なにも考えられなかった。
ポケットから携帯電話を取り出し確認するも、さきほど送ったメールはまだ、未読のまま放置されていた。
電話を掛けようかと画面をタップしかけ、これでもし留守番電話サービスに繋がったら、そこにひどい暴言を吐いてしまいそうで、止めた。
しばらくソファの上でじっと座り込んでいた彼は、今度は立ち上がり、部屋の中をうろうろと歩き回った。
それから頭を冷やそうと、シャワーを浴びた。
浴室から出て、彼女が帰宅していないかと思ったが、部屋は変わらず静まり返っていた。
再び電話の画面を見たが、やはりそこには何のメッセージも届いていない。
じわじわと黒い不安が、彼の胸をしめつけた。
七緒が美しく装うことを始めてから、ずっと恐れていたことが現実になった、と思った。
地位も金もある若い魅力的な男が、横から彼女をかっさらって行く。そんな悪夢が現実になったかと。