愛され秘書の結婚事情
「このサフランソース、濃厚なのに後味サッパリしていて美味しいですね! 隠し味に何を使っているのかしら……」
無邪気に料理を堪能する七緒を、悠臣は無言で観察していた。
そして低い声で呟く。
「こういう料理に、随分と慣れているね」
「え?」
「いや」
すぐに笑顔を作り、悠臣は「それよりも」と口調を変えた。
「今朝の話の続きをしてくれないか。会社を辞めたいって本当に?」
「あ……」
七緒は笑顔を引っ込めて、そのままカトラリーも皿に戻した。