愛され秘書の結婚事情
だがその件が落ち着いたと思った先月、七緒の母、路子(みちこ)が塚田家を訪問し、今度は一人で塚田夫婦に謝罪をした。
いわく、娘はあちらでいい人を見つけ、このまま東京で暮らすそうです。大変申し訳ないが、央基さんとの縁談話はなかったことにしてくれないか、と。
これにはさすがに塚田夫妻も呆れ、弟が迷惑を掛けて申し訳ないから、縁談はなかったことにしてくれ、という理由で断るならともかく、央基以外の男が出来たから結婚できないと言うのは、あまりに無礼ではないか、と激昂した。
そこで慌てて夫の昌輝(まさてる)も塚川家を訪れ、彼は妻の非礼を土下座する勢いで詫びた。
しかし塚川夫妻の怒りは収まらず、縁談を一方的に破棄されたことによる慰謝料請求するとまで言い出した。
それを央基が止めた。
自分は別に、七緒が自分と結婚したくないなら、それで構わない。ただこちらの言い分もそれなりにあり、出来れば自分が彼女に直接会って話したい。
彼はそう両親に訴えた。
彼の主張は認められ、そしてこの突然の上京となった。