愛され秘書の結婚事情

「……なるほど。親御さんが選んだ見合い相手というのが、彼のことだったんだね」

「はい……」

 その話を聞いて七緒はびっくりしたが、考えてみれば当然の話でもあった。

 佐々田家と塚川家は祖父の代から親交が深く、七緒と央基は双子の兄妹のように育った。

 双方の親が彼らの成長を見守ってきて、その人となりもわかっている。

 央基は親の事業を継いで、今は塚川グループ本社で専務取締役として働いている。

 資産家で有名な塚川家の三男坊である彼は、七緒と結婚するのなら、塚川の名を捨てて佐々田家の婿養子に入っても良い、と佐々田の両親に伝えたらしい。

 長子の七緒は優秀だが女の子で、次子の竜巳は色々と頼りない。

 そんな現状、七緒同様に優秀で実家とも懇意にしている央基が婿に来てくれるのなら、佐々田の家にとってこれ以上の縁談はないだろう。
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