愛され秘書の結婚事情

「今日、央基に言われました。家族のためを思うなら、自分と結婚すべきだと。そうすることで佐々田の家も安泰になるし、双方の親も喜ぶし、弟のことも近くで見守ってやれると。……私も、彼の言う通りだと思います」

「……そう」

 静かに答え、悠臣は言った。

「それで君はどうしたいの。彼の言う通り、実家に帰って彼と結婚するの」

「……意地悪」

 目に涙を滲ませて、七緒は悠臣を軽く睨んだ。

「そうした方がいいってわかっていても、私がそう出来ないことは、悠臣さんもわかっているでしょう」

「うん」

 嬉しそうな笑顔を見せ、悠臣は両手で彼女を抱き寄せた。

 素直に腕の中に収まった七緒の頭を、右手で優しく撫でてやる。

「ごめんね。ちょっと意地悪した」

 温かな腕に包まれて、七緒は堪えていた涙を解放した。
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