愛され秘書の結婚事情
ただ軽く唇を触れただけのスキンシップだが、慣れた手付きで抱き寄せられ、七緒はドキリとして顔を赤らめた。
「悠臣さんて時々、日本人に見えない……」
「それは褒め言葉なの?」
「……そうですね、褒め言葉です。気障な仕草がすごく様になるから……」
「それはどうもありがとう」
悠臣はニッコリ笑い、顔色の良くなった彼女を見て、「元気になったみたいだね」と言った。
七緒も笑顔で「はい」と答えた。
「どうせ悩んでも、私は悠臣さんと別れるなんて考えられないし。央基と結婚しても上手くいかないと思うし。……親不孝者なのは昔からだし」
最後の台詞を言う時だけ、少し声のトーンを落とした七緒だったが、悠臣は表情を変えずに「そう」とだけ言った。
七緒はそんな彼にスス……と近寄り、広い胸に抱きついた。
「ありがとうございました。昨日……話を聞いてもらえて。お陰で、迷いから抜け出せました。あと、私が眠るまで隣にいてくれて……」
「良く眠れたなら良かった。それに頼まれなくても、僕は毎日君の隣で眠るつもりだよ」
その返事にクスリと笑い、七緒は「はい。そうして下さい」と言った。