愛され秘書の結婚事情
対する央基は、端的な物言いの中に刃を仕込み、常に臨戦態勢で話す癖があった。
大好きな七緒に対してさえその悪い癖が出て、結局大学の時に交際までこぎつけたものの、心ない言葉を吐いて喧嘩別れとなった。
七緒は自分が振られた立場だと思っていたが、央基の方は自分が振られたと主張した。
「お前みたいな可愛くない女、もう知らねえ!」と、その日は喧嘩別れたしたものの。
央基の方は、すぐに仲直り出来るものと思っていた。
しかしどう仲直りするかタイミングを見計らっている間に、七緒はサブマリンの入社試験を受け、さっさと東京行きを決めてしまった。
それで央基は、「自分は捨てられた」と思ったそうだ。
昨日の会話で判明した事実だが、その話を聞いた時も、七緒は驚き呆れた。
「じゃあどうして私が東京へ行く前に、そのことを話さなかったのよ」
「言えるかよ。一言の相談もなく、勝手に東京行きを決めたような女に、何を言えっていうんだよ。頼むから俺を置いて行かないでくれってか? 死んでも言わねぇ」
「…………」
プライドの高い央基らしい答えだったが、七緒はそれで逆に気持ちに整理がついた。