愛され秘書の結婚事情
「え? ……え?」
明らかに動転している彼女を見つめ、悠臣はその頭にそっと手を置いた。
「電話じゃなく、直接お父さんとお母さんに話をしよう。今の君を見たら、ご両親もきっと安心すると思うし、こういう状況なら、結婚の挨拶は早い方がいいだろう? 僕からもお二人に話したいことがあるし……」
「悠臣さん……」
思いがけない提案をされ、けれど七緒は彼の気持ちが嬉しくて、すぐに満面の笑みを見せた。
「はい。ありがとうございます。きっと母も喜びます。私も……」
そこで言葉に詰まり、七緒は言葉で伝えるのを諦めて、両腕で強く悠臣を抱き締めた。
彼はそんな彼女の体を受け止め、顎の下にある彼女の髪にそっとキスをした。
「喜ぶのはまだ早いよ。まずは結婚の許しを得るために、君のお父さんを説得しなくちゃね」
「たとえ反対されても、私の結婚する相手は、悠臣さんしかいません」
「ダメだよ、やる前から諦めちゃ。僕はちゃんと両家の親が揃った結婚式を挙げて、世界一綺麗な花嫁を皆に見せびらかす計画があるんだから」
相変わらずの軽口に笑いながら、七緒は涙の滲んだ目で「はい」と頷いた。