愛され秘書の結婚事情

 キョトンとする七緒と竜巳に、悠臣は「これも僕の勝手な推理だけど」と断って話した。

「春生まれの長女には、春の星座である北斗七星から七の字を。夏生まれの長男には、夏の星座であるりゅう座とへびつかい座から字をとって、それぞれ七緒、竜巳とつけた。……違いますか」

 悠臣の指摘に、昌輝は心底驚いた顔で彼を見た。

「なぜ……」

「お父さんが議員をされていた頃のホームページを見たんです。学歴の欄に九州のK大学卒業とありました。理学部地質学科を出ておられますが、その学科は今、地球惑星科学科と名前を変えています。ですからひょっとするとお父さんも、天体や宇宙への関心が高いのではないかと思って」

 いつもの柔らかな語り口で、悠臣は言った。

「その観点から七緒さんと竜巳君の名前を見ると、自然と星座が浮かんだんです。竜巳という名はまさしく、りゅう座とへびつかい座から。七緒さんの方は、緒という漢字に結んだ糸という意味があるから、七つの結び目を持つ北斗七星を表しているのかと……違いますか?」

「仰るとおりです。どちらの名前も私が考えました。二人とも画数も良かったので、妻以外の者には姓名判断の有名な占い師につけてもらった、と嘘をつきました」

 昌輝の言葉に、悠臣は満足気に「そうですか」と笑顔を見せた。
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