愛され秘書の結婚事情
生まれて始めて見るような父の柔和な笑みに、七緒は涙を堪えきれず、その目から大粒の涙を落とした。
「そんな……お父さん……。どうして言ってくれなかったの……。お祖母ちゃんはもう、何年も前に亡くなっているのに……」
「話せば逆に、優しいお前を家に縛る結果になると思った。厳しく分からず屋の父であれば、お前も反抗しやすいだろう」
「ただ不器用なだけでしょう」
隣から路子が突っ込み、母は娘を優しく見つめた。
「でも私もね、言ったのよ。もういいんじゃないですかって。そろそろ親馬鹿な父親の正体を明かしても、子供達はちゃんと受け入れてくれますよって」
「しかし今さら……、恥ずかしいだろう」
「ほら、やっぱり照れてただけだった」
軽口を叩き、笑顔になった両親を見つめ、七緒は化粧の剥げた顔で笑った。
「お父さん……お母さん……。ありがとうございます……。私、二人の娘で良かった……」
「やあね、何を今さら」
「まったくだ」