愛され秘書の結婚事情
「やるやらないは君次第だ。だけど僕は、君はチームの司令塔になれる人間だと思う。スポーツもビジネスも同じだ。明確な目標を掲げてその実現に向け戦略を練り、己を鍛えてミスなく動く。そして指示を出す人間が無能だと、どんなに選手が優秀でも、そのチームは試合に勝てない。これはサッカーでもアメフトでも、ビジネスでも同じだよ」
「サッカーと、同じ……」
悠臣のこの言葉に、竜巳はかなり心を動かしたようだった。
そして彼の話を竜巳のみならず、七緒も両親も息を詰めて聞き入っていた。
(ああ、私が尊敬する、桐矢常務の顔だ……)
悠臣の真剣な横顔を見つめながら、七緒は思った。
温厚でのんびりしたキャラに見られる悠臣はけれど、いざ会議の席や商談の場では、今のような圧倒的なオーラと魅力を放ち、折衝の相手をいつの間にか自分の味方につける才能があった。
そんな彼をずっと隣で見ていた七緒は、いつしか彼の助けとなる秘書の仕事を天職だと思うようになった。
(そっか。私、秘書の仕事が好きなんじゃなくて、悠臣さんのサポートを出来ることが嬉しくて、そんな自分が好きだったんだ……)