愛され秘書の結婚事情
こんな時だ。
自分と彼女の年齢差を、猛烈に引け目に感じるのは。
七緒はまだ、三十歳になったばかり。つい先日までは二十代だった。
比べて自分は今年四十一になる。二十代だった頃ははるか遠い昔だ。
多少の睡眠不足も不摂生も、あの頃はなんとも思わなかった。
だが今は違う。
夜を迎える前に明日の予定が気になるし、早朝の仕事が入ると早く帰って休みたいと思う。
油っこい料理が沢山食べられないし、ガッツリ肉料理よりも野菜を多く使った素朴な家庭料理に心惹かれる。
仕事が立て込むと肩や目に一気に来るし、徹夜なんて絶対に無理だ。
何より、毎晩隣で若く美しい恋人が眠っているというのに、彼女を抱くのが週末に限られているのが、自分でも信じられない。
昔は毎晩だって出来たはずなのに、今はただ、彼女を腕の中に抱いて眠るだけで満足している自分がいる。
男は二十代をピークに性欲が減退し、女性は三十代から増すと聞く。
こんな不甲斐なさでは、いずれ彼女に不満を抱かせるのではと、そういう心配が今からある。