愛され秘書の結婚事情

「七緒……」

 淹れたてのコーヒーを受け取って、悠臣は思い切って訊ねた。

「その……今日はもう遅いけど……」

「そうですね。もう十時を過ぎてますね」

 悠臣の隣に座り、お揃いのカップを手に、七緒は答えた。

「だけど今日はもう、お風呂も食事もあっちで済ませましたから、あとは寝るだけですね」

「……そうだね」

「あ、明日も私はいつもの時間に出社しますが、常務は二時からの会議までに出社されたら、大丈夫ですよ」

「うん、それであの……」

 悠臣は言い辛そうな顔をして、彼女を見た。

「えーと、今夜はその……する?」

「え?」

「いや、だってほら、週末だし……。昨日は今日の朝が早いからって、さっさと寝ちゃったし」

 何でこんなに焦っているんだ、と自分で自分にツッコミを入れながら、悠臣はしどろもどろに話した。

「だからえっと、週末なのにしてないでしょう? だからええと、七緒さんはその……したい気分かどうかって話なんだけど……」

「悠臣さんはどうなんですか」

 驚くほど冷静な顔で、七緒は逆に聞き返した。

 そうくると予想していなかった悠臣は、「え」と一言呟いて、絶句した。
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