愛され秘書の結婚事情
「七緒……。そんなお礼はいらないよ。今日のことは、僕が僕自身のためにやったことだから」
七緒は顔を上げてフッと笑い、「きっとそう仰ると思いました」と言った。
「あなたがそういう人だから、私はこの先ずっと、あなたに抱いてもらえなくても、あなたのために尽くします。それだけが唯一、私があなたに出来る恩返しですから」
指先で涙を拭い、七緒はそう言って笑った。
「それは悪い冗談だ」
悠臣は驚いた顔をし、涙目の彼女の頬に触れた。
「もし本気で僕に恩返しがしたいと思うなら、別の形で返して欲しい」
「はい。ご希望があれば仰って下さい」
「うん。まずプライベートの時間は、その堅苦しい敬語をやめること」
「えっ……」
「二つ目は、何か困ったことや悩みごとがあった時は、真っ先に僕に相談すること」
「…………」
「三つ目は、毎朝毎晩、キスの挨拶を欠かさないこと」