愛され秘書の結婚事情

 重い空気のまま肉料理まで終え、デザートとコーヒーが運ばれて来たタイミングで、いきなり悠臣が口を開いた。

「……佐々田さんには今、好きな人はいないの」

「いません」

 七緒は即答した。

「これまで結婚の話が出たことは?」

「ありません」

 自嘲気味に笑い、七緒は言った。

「大学時代、同郷で同級生だった人と少しだけお付き合いしましたが、私がこんな性格ですから、可愛げがないと振られてしまいました」

「……見る目がない男だね」

 悠臣の呟きにクスと笑い、「事実ですから」と七緒は言った。
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