愛され秘書の結婚事情
「……まだ何かご用?」
不快を露わに抑えた声で訊ねた七緒に、央基は「今日はお前に用があるわけじゃない」と言った。
「今日は桐矢常務に会いに来たんだ」
「……桐矢はまだ出社しておりません。ご用件なら秘書のわたくしが承ります」
「あ、そう」
央基はすると、そこでいきなり七緒の腰を抱き寄せ、その唇にキスをした。
「キャーーーッ!」と悲鳴を上げたのは、七緒でなく周りにいた女性社員だった。
「な……な……」
呆然とする七緒に、央基はニヤリと笑い、言った。
「これが伝言だ。ちゃんと常務に伝えておけよ」
大胆な宣戦布告をし、央基はさっさと外に出て行った。
残された七緒は呆然としていたが、ハッと我に返ると、足早に二階へと走った。