愛され秘書の結婚事情
両腕で背と頭をガッチリ固定し、悠臣は彼女に深く口づけた。
唇だけでなく、舌と腔内を蹂躙するような激しいキスに、七緒はたちまち理性を溶かし、男の腕の中で小さく震えた。
永遠と思えるような長いキスの後、悠臣がようやく腕の力を緩めると、七緒はその腕にガックリと凭れかかった。
「こんな……急に……ひどい……」
そう呟く声はすでに、色香を漂わす女のものだった。
悠臣は細い顎に指をかけ、上向かせた。
上気した頬とわずかに開いた唇が艶かしく、潤んだ瞳が彼を見上げる。
「……もうすぐ十二時になる。佐々田さん。僕と一緒にランチを取ろう」
「えっ?」
相手の了承を得ないまま、悠臣は七緒の手を引きエレベーターに乗り込んだ。
秘書の手を掴んで引っ張っていく常務を見て、廊下を歩いていた社員がびっくりした顔をする。
そのまま地下駐車場まで行き、悠臣は社用車でなく、自分の愛車であるドイツ車の助手席に彼女を乗せた。
車はあっという間に、社屋ビルから遠ざかっていった。