愛され秘書の結婚事情

「上京してサブマリンに入社してからは、仕事を覚えることに必死で。仕事を覚えると今度は凄く楽しくなって……。秘書の仕事は責任も重く業務内容も幅広いですが、それゆえにやりがいがありました」

「もう過去形で話すの」

 悠臣に指摘され、七緒は寂しげに微笑んだ。

「申し訳ありません」

「じゃあ今の仕事は好きなんだね。会社が嫌になったとか、僕の下で働くのが嫌とかって理由ではないんだね」

「もちろんです」

 今度も七緒は即答した。

「会社も仕事も、心から好きです。常務のことも尊敬しております」

「ありがとう。じゃあ僕のことも、心から好いてくれているわけだ」

「はい」
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