愛され秘書の結婚事情
悠臣は十年の海外経験で得た知識と経験を元に、次々と新規店舗をプロデュースしては成功させ、サブマリンはその後も順調に業績を伸ばしていった。
古株の役員達も彼の手腕を認めざるを得ず、隆盛社長の後押しもあって、悠臣は三十七歳の若さで常務取締役に抜擢された。
悠臣が入社した当時は、「伯父の七光り課長」「顔だけ課長」と揶揄していた周囲の社員も、有能で気さく、常に穏やかで紳士な彼にたちまち魅了され、今では「桐矢常務ファンクラブ」なるものまであるらしい。
有名企業の取締役で実年齢マイナス五歳の若さ、ルックスもモデルばりに優れた悠臣は当然女性からの人気も高く、社内のみならず、仕事で知り合った令嬢や芸能人からのアプローチも多い。
しかし「前の結婚で女性には懲りた」が口癖の彼は、驚くほど身持ちが堅かった。