愛され秘書の結婚事情
実はもう秘書室室長だけには、一ヶ月以上前から、誕生日の後に会社を辞める予定であることは伝えていた。
一週間後の月曜日に退職届を出し、引き継ぎを行って、二ヶ月後には退職の予定だ。
本来は悠臣に一番に報告すべきことだが、なぜかずっと言えないまま昨日という日を迎えてしまった。
それは七緒の心が、現実を拒否しているからに他ならない。
悠臣に退職の意を伝えれば、その時こそ本当にもう引き返せなくなる。
会社を辞めることが現実になり、七年間暮らした東京を離れて、のどかで自然豊かで、けれど自由はどこにもない、そんな故郷に戻らなければならない。