愛され秘書の結婚事情

 そこまで考えて、七緒の目にまたじわりと涙が滲んだ。

 慌てて涙を拭い、七緒はドライヤーで乾かしたばかりの髪を乱暴に一本に纏めた。

 そしてキッチンへ行き、せっかくの休日だから凝った朝食にしようと冷蔵庫を開ける。

「食パンと卵……牛乳……。ハムがあるけど……今日は甘い物が食べたいから、フレンチトーストにしよう」

 しかし“フレンチ”という単語にまた昨日のことを思い出し、七緒は大きく首を振った。

(いい加減にしなさい。駄々っ子みたいにいつまでも感傷に浸ってないで、成すべきことをしなさい)
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