愛され秘書の結婚事情

 無理やり常務との記憶を封じ込め、七緒は食材を冷蔵庫から取り出した。

 しかしそのタイミングで、玄関のチャイムが鳴った。

 とっさにキッチンの時計を確認すると、午前七時を五分ほど過ぎたところだった。

「え。誰?」

 まさか、期限が迫ったことで田舎の両親が突撃してきたかと、七緒はおそるおそるドアスコープから外を確認した。

 不思議なことに、最初に視界に入ったのは一面の赤だった。

 一体何の赤だと思っていると、赤い丸から誰かが顔を覗かせた。

 その顔を見て、七緒はまた驚いた。

 驚きの余り、「えっ」という声まで出た。

 その声に、廊下に立っていた人物が反応した。
< 42 / 299 >

この作品をシェア

pagetop