愛され秘書の結婚事情

「佐々田さん? いるの?」

 早朝の来訪者は、なんと悠臣だった。

 七緒は「は、はいっ!」と慌てて返事をして、反射的にチェーンと鍵を外した。

 内側からドアを開くと、やはり外にいたのは悠臣で間違いなかった。

 昨日とは違うスーツ姿で、手に大きなバラの花束を抱えている。

「赤い色の正体はこれか」と思いながら、七緒は「一体どうされたんですか?」と聞いた。

「うん。とりあえず、中に入ってもいいかい」

 あまり寝ていないのか、悠臣は少しだけ隈の目立つ顔で言った。
< 43 / 299 >

この作品をシェア

pagetop