愛され秘書の結婚事情

 表情は硬かったが、口調はいつもの彼に戻っていたため、七緒はホッとしながら「もちろんです、どうぞ」と上司を室内に入れた。

 そこで彼女は、上司の視線が自分の足に注がれていることに気付いた。

「あっ、きゃあ!」

 ようやく自分が、生足剥き出し状態であることに気付き、大慌てで自室に引き返す。

「申し訳ございませんっ。少々お待ち下さいませっ!」

 相手を玄関先に待たせている状況でスーツに着替えるわけにもいかず、とにかく手近なスエットパンツを手に取り、それを履く。

 そしてまたおずおずと顔を出し、「失礼致しました……」と頭を下げる。
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