愛され秘書の結婚事情
第二章「迷路の中」
1.
「佐々田七緒さん。僕と、結婚してください!」
真剣そのものの表情で、悠臣は言った。
豪華なバラの花束を差し出し、彼はじっと彼女の返事を待っていた。
だが七緒の方は、ただポカンとすることしか出来なかった。
とてもこれが、現実に起きていることだとは思えなかった。
自分が夢を見ているのかと思い、七緒は思いきり自分の右頬を叩いた。
バシッと強い音がして、叩いた勢いで七緒は軽くよろめいた。
「あっ!」と悠臣が声を上げた時にはもう、彼女の頬は赤い手形が付いていた。