愛され秘書の結婚事情
顔を真っ赤に染めて固まった七緒を、悠臣は優しい表情でじっと見つめた。
「いきなりこんなオジさんにプロポーズされて、驚くのも無理はない。だけど僕としても、生半可な覚悟で君に結婚を申し込んだわけじゃない。もっと時間を掛けて口説くつもりだったし、もし僕よりも相応しい相手がいたなら告白もせず身を引くつもりだった。だけど君には時間がないし、今、特定の相手はいないと言う。親の決めたどこの馬の骨とも知れない男に君を取られるくらいなら、一世一代の勇気を振り絞ってプロポーズしようと決めたんだ」
「え……あの……」
徐々に左脳が正常な働きを始め、悠臣の言葉を正確に認識した途端、右脳も活動を始めた。
「まさか常務……。本気で私と、結婚されるおつもりですか」
「本気も本気、そのおつもりだよ」