愛され秘書の結婚事情
「嫌ってないのはわかったけど、男としてはどうかな」
そう言って悠臣は、テーブルの上に置かれた七緒の左手に、自分の右手をそっと重ねた。
七緒はびっくりした顔で二人の重なった手を見たが、彼の手を跳ね除けることはしなかった。
「僕にこうされて、どう思う。気持ち悪い?」
「……いえ」
とても相手の顔は見られず、目を伏せたまま七緒は答えた。
「嫌じゃありません……」
「じゃあ嬉しい? どう感じるか、正直に言って」
まるで何か難しいテストを受けているような表情で、七緒はじっと悠臣の大きな手を見つめた。
自分の手より一回り大きな彼の手は、少し節が目立つものの染みも皺もなく指はすらりと長く、まるでピアニストの手みたいに美しかった。