愛され秘書の結婚事情
「ななな、何をなさるんですかっ!」
「手へのキスだけど」
両手を広げ、悠臣はおどけた口調で言った。
「もし夫婦になるのなら、手だけでなくて君のあらゆるところにキスするつもりだけど。やっぱりそれは不快かな」
「あらっゆるっところって……!」
上ずった声で、七緒はとっさに保冷剤を持っていた右手で左手を庇うように握った。
「ああ、良かった。あまり腫れてない」
悠臣は七緒の動揺を意に介さず、落ちた保冷剤を持ってそのまま彼女の頬に当てた。
「ちょっと、こっちにもっと顔を寄せて」
「えっ……」