愛され秘書の結婚事情

2.


「常務と私が結婚だなんて、無理ですよ……」

 両頬を人質に取られた状態で、七緒は小さな声で言った。

「それは僕がオジサンだから?」

「違います」

 だんだんと、自分一人だけ動揺しているのが腹立たしくなり、彼女はジロリと上司を睨んだ。

 だが赤い顔で頬を挟まれた今の状況では、迫力は皆無だった。

「桐矢常務の側に瑕疵は一切ありません。相手が私では常務に何のメリットもございませんと、そう申し上げているんです」

「そうかなぁ?」
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