愛され秘書の結婚事情

 七緒はそこで、じっと悠臣の顔を見つめた。

 今でも充分に魅力的な彼は、自分と同じ年の頃は、どれほど輝いた魅力に満ちていただろう、と思った。

 そんな彼だからこそ、前妻は彼に惹かれ、結婚し、二人の気持ちがすれ違った後も、離婚を選択しなかったのだろうか。

「七緒さん? どうしたの?」

 笑顔で問われ、七緒はハッと我に返った。

「いえあの……。とにかくプロポーズのお返事は、必ず近日中に致します」

「近日中っていつ? よく新店舗の宣伝チラシで近日オープンとかって謳っているけど、意外と待たせるよね、あれ」

 七緒はプッと噴き出して、「そんなにお待たせしません。……月曜日には、必ず」と答えた。
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