愛され秘書の結婚事情
「どうして桐矢さんは、私の言葉をオウム返しされるんですか。何だか馬鹿にされているようで気分が悪いです」
「それは僕も気分が悪いからですよ」
そう言って、悠臣はクルリと回転し七緒に向き直った。
「僕はさっき言ったよね。プライベートの場では、僕のことを一人の男として見てくれと」
「……はい」
「あなたはボーイフレンドを家に呼んで、お飲み物はコーヒーでよろしいでしょうかって聞くの?」
「え。あ……」
ようやく相手の発言の意図に気付き、七緒は恥ずかしそうに目を伏せた。
「いえ、言いません」
「だよね。じゃあこの場合、正しい言い方は?」
「……桐矢さんも、コーヒーでいいですか」
恥ずかしそうに言い直した七緒を見て、悠臣は満面の笑みで「正解です」と言った。