愛され秘書の結婚事情

「本当は百八本にしたかったんだけどねー。ちょっと大き過ぎるから止めておいた」

 悠臣はそう言って快活に笑ったが、当然七緒は花言葉にも詳しく、百八本のバラが「結婚して下さい」というストレートなプロポーズの意味を持つことも知っている。

「五十本でも、結構なお値段したよね……」

 昨日のドレスにディナーに、今日のバラの花束に。

 たったの二日で、彼は自分にどれだけ使ったのだろう、と七緒は思った。

 元々裕福な男だし、貢いでくれた額がイコール愛情の重さだとは思わない。

 だがそれでも、自分を喜ばせるためだけに散財を惜しまない姿勢には、それだけ大切に思ってくれている、そういう心を感じる。
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