愛され秘書の結婚事情

 頭の中で、二人の七緒が口論を始める。

「もうこうなったらさ、常務の誘いに乗っちゃおうよ」

「何言ってるの。そんなの無理よ無理」

「なんで無理なの。親には結婚相手を見つけたって報告して、とりあえず婚約だけしちゃえばいいじゃん。それでこのまま仕事を続けて、結婚のことはそれから考えればいいじゃん」

「常務に対して、そんな不誠実なことが出来るわけないでしょう。あんなに真剣にプロポーズして下さったのに、その好意を自分のエゴに利用するだなんて」

「だって常務は、利用されるためにプロポーズしてくれたんでしょ。だったらこっちも利用してあげればいいじゃない。ウィンウィンだよ」

「それはそうかもしれないけど、だけどいつまでも返事を引き延ばすわけにはいかないし……」
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