愛され秘書の結婚事情

 そこで決着がついた。

 七緒の建前は、本音の意見に反論出来なかった。

 同じタイミングで、電車が駅に着いた。

 このまま改札を抜けて一〇分も歩けば、本社に到着する。

 会社に着いたらミーティングをして、一時間後には出社して来た悠臣を、いつものようにエレベーターの出口で迎えて。

 それから……。

(……どうしよう)

 人の流れに乗って出口に向かい、七緒は途方に暮れた。

 家を出る時は、プロポーズを断るつもりでいた。

 しかし電車に乗っている間に、迷いが出た。

 悠臣には今日、返事をすると約束した。

 約束したのだから、返事をしなければならない。
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